だしの香りで始まる一日。

日記

だしの香りで始まる一日。

朝の厨房で、火を入れた鍋の前に立つと、
ふわぁっと、昆布とかつおの香りが広がります。
その香りを嗅ぐと、「今日も一日が始まるなぁ」と思うんです。

静かな朝に、湯気が立ちのぼる

お湯を張った鍋の中で、昆布がゆっくりとほどけていく。
立ちのぼる湯気の向こうに、うっすらと朝の光が差し込みます。
静けさの中に、かすかな音と香りが重なって、厨房が動き出す瞬間です。

黄金色のだし──手間よりも、呼吸のように

僕が好んで使うのは、血合いを抜いたかつお節。
香りが澄んで、だしの色も黄金色になるんです。
血合いは栄養が多いけれど、香りが少し強くなりすぎて、
お吸い物の味がほんの少しだけ“にごる”んです。
だから、抜いて、静かに引きます。

だしって、時間をかけすぎてもダメなんです。
長く煮ると、香りも色も重たくなる。
だから、火の入り方や湯気の立ち方を見ながら、
目で、耳で、香りで「今だ」と感じる瞬間を待ちます。
この“待つ時間”が、僕は好きなんです。

お吸い物は、料理人の姿勢を映す鏡

お吸い物って、派手じゃないけれど、そのお店の味が出る。
「お吸い物をいただけば、お店の姿勢がわかりますね」
そう言っていただいたことがあります。
きっと、やなぎさわやも同じで、こういう“目立たないところ”に、
料理の心が出る気がします。

ご家庭でもできる、黄金のだしと葛打ち

ご家庭でも、黄金のだしは取れます。
三つ葉や筍を添えるだけで、香りも見た目も華やかに。
ちょっとボリュームを出したいときは、
しんじょうや海老を「葛打ち」してみてください。
くず粉をまぶして軽く茹でるだけ。無ければ、片栗粉でも良いですよ。
見た目も美しく、味もすっきり仕上がります。

だしが生む“やさしさ”と“食べ応え”

しっかりとしただしがあれば、揚げ物も煮物も重たくなくて、ちゃんと満足できる。
お年寄りにも、お子さまにも食べやすい。
“やさしさ”と“食べ応え”が同じ鍋の中で生まれる──
それが、うちの料理のいちばんの理想です。

当たり前を、ていねいに続けていく

特別なことをしているわけではありません。
ただ、当たり前のことを、毎日きちんと続けているだけ。
その「当たり前」が、誰かの食卓で安心につながれば、
それだけで、もう十分です。

今日も、黄金の香りのなかで、一日が始まります。
明日の朝も、同じ鍋から香りを立ち上げたいと思います。


📍京都割烹やなぎさわや(松山・東温・伊予・砥部・松前に配達)
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