やわらかいだけでは届かない──折詰が“やさしく仕上がる”理由。
「やわらかく作るのは簡単。
でも、やさしく仕上げるのは難しい」
師匠のその言葉を、今も思い出します。
ご法要のお料理について、
「やわらかくて、いろいろと食べられる折詰がいい」
と、ご相談をいただくことがあります。
師匠に教わったのは、
“やわらかくする”ことよりも、“やさしく仕上げる”こと。
その違いが分かるようになったのは、
この仕事を続けてきた今だからこそ…だと思います。
厨房では、炊き合わせ、焼き魚、天ぷら、だし巻き、肉料理──
それぞれの素材に合わせて温度と時間を少しずつ変えます。
同じ鍋でも、火の入り方が一つひとつ違う。
湿度や気温で、出汁の吸い方も微妙に変わります。
音や香りを確かめながら、
一品ずつ“ちょうどよい”ところで火を止める。
仕上げた料理を器に重ねるたび、
空気の温度が少し変わるのを感じます。
湯気の代わりに、静かな香りが立ち上がる時間。
仕出しの仕事では、この“冷ます時間”がいちばん大事です。
・赤い焼き魚の艶
・白い煮物のやさしさ
・黄のだし巻きの柔らかさ
・緑の葉のさわやかさ
一折の中で色と味が響き合うように、
箸を進めるたびに次の味が待っている。
それが、師匠の言う“やさしい仕上がり”なのだと、
最近、ようやくわかる気がします。
お客様から、
「どれもやわらかくて、いろいろ入っていてうれしかったです」
と声をいただくたびに、
この折詰づくりがただの詰め合わせではないことを思い出します。
食べやすさの中に、確かな食べ応えを。
その加減を見極める手の感覚を、
師匠から受け継いだままの“温度”でつないでいきたい。
今日も一折ずつ、
食べる方の笑顔を思い浮かべながら仕上げています。
松山市・東温市・伊予市・砥部町・松前町へ配達可。
ご予約は二日前まで承ります(前日応相談)。

