「みんまって、どんな行事なんでしょうか…」
今朝、お電話でそう尋ねられたお客様がいらっしゃいました。
声のトーンから、
“初めてで、少し不安があるんだろうな”と感じる一言でした。
愛媛・松山では、12月の巳の日に
その年に亡くなられた方の“お正月”として行われる
「みんま」という特有の文化が残っています。
しかし、初めて迎えられるご家族にとっては、
準備・流れ・人数・料理など、分からないことが多く、
迷いやすい行事でもあります。
そこで今回の第1回では、
「みんま」とは何なのか、
いつ行われ、どのように過ごすのか、
そして、初めてのご家族が安心できるポイントを
ひとつずつ丁寧にまとめました。
みんまは“新仏様のお正月”──松山だけに残る特有の文化
「みんま」は、その年に亡くなられた新仏様にとって、
初めてのお正月として迎える「巳正月(みしょうがつ)」の行事です。
愛媛でも特に松山・中予地域に深く根づいており、
全国的に見ても珍しい供養文化として知られています。
新仏様のお正月としての位置づけ
年内に亡くなられた方に対し、
「どうか迎えられるはずだったお正月を、お見せしてあげたい」
という想いから受け継がれてきたとされ、
家族が集まり、静かに手を合わせる日として大切にされています。
全国でも珍しい“中予地域”の文化
仏教行事の一種ではありますが、
ここまで明確に“12月の巳の日”に行う地域は少なく、
松山地方特有の慣習として語られています。
どの家も自然と続けており、
「今年も巳の日が来たね」と、季節の合図のように受け継がれています。
なぜ残っているのか(地域の背景)
松山は、親族同士のつながりが強く、
年末に一度しっかりと集まりたいという文化があります。
そのため、みんまは自然と受け継がれ、
現代でも途絶えることなく続いているのだと感じます。
みんまは“いつ”行われる?|令和7年は12月14日(日)が本命日
巳の日(み)の説明と2回ある理由
みんまは、毎年12月の「巳(み)の日」に行われます。
十二支の巡りで巳は12日に一度訪れるため、
12月には“第1巳の日”と“第2巳の日”の2回があります。
どちらの日に行っても問題はありませんが、
多くのご家庭では「集まりやすい日」を基準に選ばれています。
12月2日と14日、どちらを選ぶ?
令和7年は12月2日(第1巳の日)と14日(第2巳の日)。
中予地域では、毎年「第2巳の日」が本命とされる傾向が強く、
親族が集まりやすい日程から選ばれることが多いです。
特に今回は14日が日曜日に重なるため、
ご相談が集中しやすい状況がすでに見えています。
昨年の動向(需要のピーク)
昨年も、みんま当日は朝から夕方までご相談が続き、
特に第2巳の日は、お問い合わせが前週から一気に増えました。
「人数が読めない」「どんなお料理がいい?」という迷いが重なり、
初めての方ほど早めに相談される傾向がありました。
どんな流れで行うの?|墓参りと“家での時間”が中心
墓参りの準備と流れ
みんま当日の中心になるのは、午前〜正午にかけてのお墓参りです。
前日までに墓地を掃除し、当日は
重ね餅・しめ飾り・杖・草履などをお供えします。
しめ飾りを燃やし、餅をあぶっていただく地域も多く、
「故人と迎えるお正月」という意味を静かに感じる時間です。
地域ごとに細かな作法は異なりますが、
必ずしも厳格な決まりがあるわけではありません。
自宅での集まり(飲食の位置づけ)
お墓参りを終えたあとは、ご自宅へ戻って小さな集まりが始まります。
初めての方が迷われやすいのが「どれくらい準備するのか」。
松山では“招待をしない行事”とされる一方で、
近親者が自然と集まり、飲食でもてなす流れが一般的です。
食事は「気持ちを添えるもの」として選ばれるため、
華美になりすぎず、幅広い年代が食べやすい内容が喜ばれます。
地域差と“明確な決まりがない”安心
みんまには地域差が大きく、
「絶対にこうしないといけない」という決まりはありません。
そのため、初めてのご家庭ほど不安になりやすいものの、
基本は“故人を想う気持ち”があれば大丈夫です。
毎年ご相談が増える理由は、
「地域差のある行事だからこそ、確認したくなる」安心の欲求にあります。
初めてのご家族が不安になりやすい“4つのポイント”
① 人数の見えづらさ
みんまは「招待する行事」ではないため、
誰が来るのか、当日まで読めないことが多い行事です。
昨年も「最終的に3名増えました」「急に孫が来ました」など、
人数の揺れはよくあります。初めてのご家族ほど不安が強く出やすい部分です。
② 時間の調整(墓参り → 自宅)
墓参りの時間帯は地域差があり、
「午前?正午?うちはいつ行くの?」と迷われる声が多いです。
墓参りの流れに合わせて自宅での食事時間が決まるため、
準備の目安が見えづらくなるのも自然なことです。
③ 年齢差の広さ(上は80代〜下は小学生)
みんまは近親者が集まるため、年齢層が非常に幅広いのが特徴。
「祖父母も食べやすいものを…」
「子どもが好きなものも入れてほしい」など、
“全員が食べやすい内容”を用意する必要があります。
④ 段取りと準備物
重ね餅・しめ飾り・杖・草履・菓子・果物…と、
準備の種類が多く、初めての方は戸惑いやすい行事です。
しかも地域差が大きいため、
「うちは何を準備すればいいの?」というご質問が毎年最も多い部分です。
実際にいただいたご相談|「初めてで何を準備すれば…」
電話口の“声の揺れ”と最初の一言
先日、「みんまが初めてで…何を準備したら良いですか?」と、
少し声を落としながらご相談をいただきました。
その響きに、“迷いの大きさ”がすぐに伝わってきました。
みんまは形式が決まっていない分、初めての方ほど不安が強く出ます。
小さな困難(人数・段取り)
詳しく伺うと、人数が確定しておらず、
墓参りの時間や自宅での流れも掴めていないとのこと。
みんま特有の “段取りの見えにくさ” が重なり、
ご家族の中でも話がまとまりづらい状況でした。
厨房の音・動作と“気づき”
そのご相談を受けた時間、厨房ではだし巻きの返る音、
煮物の鍋の静かな泡、焼き台の短い脂の音がしていました。
その音を聞きながら、
「初めてのお客様ほど、この行事の全体像が見えづらい」
ということを改めて強く感じた瞬間でした。
相談してよい空気が生まれる瞬間
「大丈夫ですよ。去年も直前に人数が増えたご家庭がありました」
とお伝えすると、電話口でふっと息をつくような間がありました。
その小さな変化に、“相談してよかった” という空気が生まれ、
そこから一つひとつ話が進んでいきました。
みんまは“年齢差が大きい”集まり|食べやすくて安心な内容とは
幅広い年代が食べやすいポイント
みんまは、上は80代のご親族から下は小さなお子さままで、
幅広い年代が一つのテーブルを囲むことが多い行事です。
そのため、お料理は「硬すぎない」「濃すぎない」「見てすぐ手が伸びる」
この3つを満たす内容が、とても安心されます。
冷めても安心の仕立て
みんまは墓参りを挟むため、食事をとる時間が前後しやすく、
“温度変化が前提” の行事でもあります。
だからこそ、冷めても味が落ちにくい煮物・焼き物・だし巻きなど、
京割烹の冷仕立ての技が活きるお料理が喜ばれます。
見た目と量のバランス
ご親族が集まる日なので、折を開けたときの華やかさと、
無理なく食べ切れる量のバランスが大切になります。
特に初めてのみんまでは「どれくらい必要?」という不安が大きいため、
見た目と量の“ちょうど良さ”が安心につながります。
複数の折詰を組み合わせるメリット
人数や年代差に合わせ、2種以上の折を組み合わせると迷いが減ります。
人数未確定でも対応できる理由
みんまは人数が直前で変わりやすいため、
前日正午までのご相談でお受けできる場合があります。
まとめ|準備に迷われたら、前日正午までのご相談でお受けできる場合があります
不安→安心への変化
みんまは、初めて迎えられるご家族ほど「段取り・人数・お料理」の迷いが重なりやすい行事です。
けれど、流れが分かり、準備の目安が見えるだけで、不安はぐっと軽くなります。
前日正午ラインの安心
みんまは人数が動きやすいため、前日正午までのご相談で
お受けできる場合があります。
「まだ間に合いますか?」というお声には、できる限り対応いたします。
次回(第2回)への小さな予告
次回の第2回では「みんま当日の流れを、もっと分かりやすく」お伝えします。
迷われやすいポイントを、実際の相談内容にそって整理していきます。

