お彼岸に食べる「おはぎ」と「ぼたもち」の違い|由来・意味を物語で解説
春と秋のお彼岸になると、祖母が必ず用意してくれたのが「おはぎ」や「ぼたもち」。子ども心に「どうして同じものなのに名前が違うの?」と疑問に思った記憶があります。大人になった今、その答えを知ると、日本の四季と食文化の奥深さに感心させられます。本記事では、その違いと由来を、物語を交えながらわかりやすくご紹介します。
同じ和菓子なのに、なぜ呼び名が違うのか?
祖母はこう言っていました。
「おはぎもぼたもちも、同じもち米とあんこ。でも季節で名前を変えてきたんだよ」
確かに、どちらも「もち米+あんこ」の組み合わせ。違うのは、日本人が大切にしてきた四季の感性だったのです。
春のお彼岸|牡丹にちなんだ「ぼたもち」
春のお彼岸になると、祖母は「ぼたもち」と呼んでいました。由来は春に咲く大輪の牡丹(ぼたん)の花。ふっくら丸い形が牡丹に似ていることから、その名がついたと伝えられています。
「牡丹は豊かさの象徴。春の訪れと一緒に、先祖に感謝を伝えるんだよ」祖母の言葉には、自然と手を合わせたくなる重みがありました。
秋のお彼岸|萩にちなんだ「おはぎ」
秋になると同じ和菓子が「おはぎ」に変わります。由来は秋に咲く萩(はぎ)の花。小ぶりで可憐な花姿を、小さめに作られる和菓子に重ねたものです。
萩は万葉集にも詠まれた、秋を代表する植物。祖母は「秋は収穫の季節。萩の花みたいに小さな喜びを分け合うんだよ」と話してくれました。
事例1|粒あんとこしあんの違い
祖母の家では、春は「こしあん」、秋は「粒あん」で作るのが定番でした。
- 秋(おはぎ)=新豆で皮が柔らかい → 粒あんで風味を楽しむ
- 春(ぼたもち)=豆の皮が固めになる → こしあんでなめらかに
この使い分けを知ったとき、「あんこの種類にまで季節があるんだ」と子どもながらに驚いたものです。
事例2|地域による呼び方の違い
大学時代、友人の家に遊びに行ったときのこと。「これはお彼岸のぼたもち」と言われ、春でも秋でも同じ呼び名だと知って驚きました。
- 関東では年中「おはぎ」と呼ぶことが多い
- 関西では「ぼたもち」で統一されることもある
- 東北では形の違いで呼び分ける地域もある(丸=おはぎ、俵=ぼたもち)
同じ食べ物なのに、地域や習慣でこんなに違う。これも日本文化の面白さだと感じました。
事例3|家庭ごとの慣習
筆者の家庭では、春は「ぼたもち」、秋は「おはぎ」と分けて呼んでいましたが、友人の家では祖母が一年中「おはぎ」と呼んでいました。
呼び名が違っても、食卓で「ご先祖さまにありがとう」と話す気持ちは同じ。呼び方よりも、そこに込められた心が大事なのだと実感します。
なぜお彼岸に供えるのか?
おはぎやぼたもちには、次のような意味が込められています。
- 小豆の赤色=魔除け・厄除け
- 米の神聖さ=五穀豊穣を祈る供物
- 腹持ちの良さ=農作業の合間のエネルギー源
つまり、これは単なる甘味ではなく、「ご先祖を想う食べる供養」として続いてきた文化なのです。
まとめ|名前は違っても心は同じ
春は牡丹の「ぼたもち」、秋は萩の「おはぎ」。呼び方やあんこの違い、地域差があっても、本質は同じ。
ご先祖に感謝し、家族のつながりを確かめるために食べ継がれてきた和菓子です。
次回のお彼岸、ぜひ「実は同じなんだよ」と家族や友人に伝えてみてください。小さな会話が、食卓をもっとあたたかくしてくれるはずです。