勘介を覚えていてくださったご家族へ
🌧️ 雨上がりの午後、松山市内の職場へお弁当をお届けしたとき──
「うわぁ〜♪テンション上がるわー✨」
お渡しした瞬間に、そう言ってくださったKさまの笑顔。
その声が、今も心に残っています。
その夜、厨房の片づけを終えたあと、スマートフォンに届いた一通の長いLINE。
そこには、あたたかな言葉がぎっしりと綴られていました。
「今日は本当にありがとうございました😭
みんな大好評でした。唐揚げも久しぶりに食べたスタッフ、初めてのスタッフも共に喜んでいました。
副菜が豪華✨手作り丁寧な上品な味付けで、さすがやなぎさわや✨
みんな、小松菜が…筍が…と言いながら食べてました。」
医療機関で働くKさまからのメッセージでした。
“副菜が豪華”──その一言が、胸の奥にじんと響きました。
手作りにこだわってきた意味を、改めて思い出させていただきました。
「今どきお医者さんは口が肥えてるけど、最近、学会や製薬会社の勉強会でもやなぎさわやさん、多いですよね。
いつも『あ、やなぎさわやだ!』と思って嬉しく食べてました。」
この一文を読んで、厨房のみんなが静かに笑いました。
料理という仕事の中で、私たちが大切にしてきた“信頼の味”が、
確かに誰かの日常の中で息づいている──その証のように感じました。
「おいしいものは、人を幸せにするし、モチベが上がる👍
今日は月末で一番忙しい日だったけど、21:30まで仕事をしてもお腹が空くこともなく、集中して終えられました。」
“一食が、人の力になる”。
この言葉に、スタッフ全員が頷きました。
お弁当はただの食事ではなく、仕事や人生を支える「力」なのだと、改めて感じました。
そして、文の後半に、もうひとつの物語がありました。
「うちの、勘介が大好きな娘です。
昨年のクリスマスに初めての手術を受け、年明けに退院。
『どこ行きたい?』と聞いたら、『勘介行きたい!』と笑顔で言ってくれたんです。」
その一文を読んだ瞬間、胸が熱くなりました。
あの厨房の空気、湯気の立つ音、油のはぜる音──
すべてが一瞬で蘇りました。
今回も、その娘さんがとても楽しみにしてくださっていたそうです。
「夜、P-spoで勉強を終えた娘を迎えに行き、車に乗るなり『待ちきれん‼️』と食べ始めました。
家に着いたら、唐揚げ二個とご飯一口しか残っていませんでした🤣」
その光景を想像して、思わず笑みがこぼれました。
“待ちきれん”という言葉の中に、すべてが詰まっている気がしました。
「これでいくらなん?」
『800円だよ』と答えると──
『えー‼️😱 それいかんやろー!このクオリティで安いやん‼️』」
普段はお菓子ひとつ買うにも慎重な娘さんが、
この味にだけは迷いなく“安いやん!”と。
子どもは、美味しいものには正直です。
その一言が、何よりの証明でした。
副菜まで全部食べて、残ったのは梅干しの種だけ。
“一つひとつ手でつくる意味”を、あの娘さんが証明してくれたように感じました。
「勘介がなくなって、居酒屋難民となりましたが、
お弁当で少し元気が取り戻せそうです。」
その一文を読んだとき、目の奥が熱くなりました。
お店はもうなくても、味も想いも、お客様の記憶の中で生きている。
それこそが料理人冥利に尽きる瞬間です。
「このことを聞いたら、県外にいる息子も、単身赴任の夫も、
“ずるい!食べたい!”と言いそうです。
なので年末オードブルお願いしようかなと思ってます。」
娘さんが笑い、母が安心し、
息子さんとご主人が“いいなぁ”と声をそろえる──。
一つのお弁当が、家族をもう一度つなぐ。
その光景が目に浮かびました。
料理とは、ただお腹を満たすものではなく、
人と人、時間と想いを結び直すもの。
Kさま、そしてご家族の皆さま。
あの日の記憶を思い出させてくださって、本当にありがとうございました。
勘介の味は、確かに今も息づいています。
「うわぁ〜♪テンション上がるわー✨」
その言葉を胸に、今日も一食ずつ、心を込めて整えてまいります。
─ 勘介店長/京都割烹やなぎさわや 福島


