雨の音と、勘介の記憶と。
🌧️ 雨の朝。静かな仕込み場です。
湯気の立つ厨房に、しっとりとした光が差し込み、包丁の音と鍋の音が、雨音と混じり合っていました。

こんな日は、いつもよりも時間がゆっくりと流れているように感じます。
静けさの中のリズムが、心を自然と整えてくれるようです。
法要の季節に、整う料理を。
この時期は、ご法要やお寺さまのお集まりが多く、
ご家族での会食に向けたお料理を多くお作りしています。
京都割烹仕立ての懐石「花響」をはじめ、鰻の蒲焼き、天ぷら、手まり寿司など、
ひとつひとつ丁寧に詰め合わせた仕出し料理。
出汁香る京風仕立ての味わいが、場の空気をやわらかく整えてくれるように。
季節の彩りとともに、やさしい時間をお届けしています。
そして──勘介の味を、もう一度。

昼前、雨の中を「勘介のから揚げ弁当」をお届けしました。
「勘介のお弁当だったら」と言ってくださる方が今も多く、
文京町の職場まで三津浜から取りに来られる方もいらっしゃるそうです。
お渡しした瞬間、「うわー、テンション上がるわー!」と笑顔。
その一言に、胸の奥がじんと温かくなりました。
「なんで勘介閉めちゃったの?」「早く復活してください」──そんな声を今もたくさんいただきます。
市坪にお住まいのお客様は、
「どこへ行っても満足できるお店がなくて、居酒屋難民なんです」と笑いながら話してくださいました。
記憶の中で、生き続ける味。
勘介の味を覚えていてくださること、そして今も「やなぎさわや」のお弁当を選んでくださること。
そのつながりに、心から感謝しています。
料理は、香り・音・温度が重なり合うとき、
人と人の間に静かな温もりを生む──その力を、今日も信じています。
整う料理とは、心の波を整えること。
天気がどうであっても、食卓を囲む時間がやわらかく整うように。
今日もひとつひとつ、丁寧にお作りしています。
整う料理とは、心の波を静かに整えていくもの──雨の朝も、感謝の気持ちでいっぱいです。

── 福島正幸(京都割烹やなぎさわや)

